アートとしての教育――クリシュナムルティ書簡集』

J・クリシュナムルティ[著]/小林真行[訳]

1,995円(税込)

ISBN978-4-434-15287-0 C0011
アートとしての教育――クリシュナムルティ書簡集

断片的な知識に偏らない、新しい教育のかたちとは?

本書は、教育に携わる人々に宛てて書かれたクリシュナムルティの72通の書簡をまとめたものである。学びと気づき、条件づけからの解放、関係性と責任、自由と英知など、幅広いトピックに光をあてながらホリスティックな教育のあり方を提示している。こどもたちの未来に関心を寄せる全ての人たちに贈る、英知の教育論。
ここに収められている手紙は、合間を見つけて気軽に目を通す類のものではありませんし、気晴らしを与えるものでもありません。この中には真剣な意図が込められています。したがって、この手紙を読もうとする際には著者が述べていることがらをじっくりと調べるつもりで読んでください。
ちょうど、花について調べようと思えば、その花びらや茎、色合いや香り、その花がかもしだしている美しさといったものに細心の注意を払うのと同じです。
この手紙についても、それと同じような方法で調べる必要があるのです。朝方に目を通し、後は忘れっぱなしということではいけません。ただし、述べられていることがらをそのまま受け入れるのではなく、時間をかけて内容に親しみ、ときには疑問を投げかけながら探求していってください。しばらくの間、手紙と一緒に時を過ごすのです。そして、借り物ではない、あなた自身の理解を深めてください。
J・クリシュナムルティ

わたしたちが暮らしている社会・文化では、仕事に就くことや物質的な安定を得ることを追い求めるよう生徒に要求します。いかなる社会においても、こうした要求が絶えず生徒にのしかかってきます。生計を立てることが優先され、その他のことは二の次にされます。つまり、金銭が優先され、わたしたちの日常を取り巻くややこしいことがらは二次的なものと見なされるのです。
わたしたちは、このようなプロセスの順序を逆転させようとしています。人は、金銭だけでは幸せになれないからです。人生の中でお金が大きな比重を占めるようになると、わたしたちの暮らし方に偏りが生じます。教育者のみなさんには、この点をよくよく理解し、そのことがもつ重大性をくまなく認識していただきたいと思います。まず教育者がこの重要性を理解し、そのことを自身の生き方に反映させられるようになれば、両親や社会のせいで出世を人生の目標に掲げざるを得なくなった生徒を手助けすることができます。わたしたちの学校は、いかなる場合であっても、人間の全体性を培う生き方を支持しなければならないという点を強調しておきたいと思います。
(本文より)

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