復刻版シリーズ①古代篇 『人間の知恵の歴史 ― 宗教・哲学・科学の視点から ―』
大槻真一郎「著」、澤元 亙 「監修」
定価(本体2,000円+税)
ISBN978-4-434-27471-8 C0010
危機に立つ人間を救い、奮い立たせ、豊かにする「生き方の知恵」とは?
イエス・キリスト、ソクラテス、アルキメデス…… 宗教・哲学・科学の系譜をたどりながら、文明論的な視座に立ち、世界に展開した西欧文明のもつ圧倒的な威力の源泉を探る。 幻の著書、シリーズ全三巻(古代/中世/近代)として復活!
本書は「哲学をやる者」にとっての「全体としての概観」を提供することを目的とし、危機的な時代もしくは現実と向き合った著者が「貧しさ」を自覚し「生きる知恵」を求めた記録です。
【本書の内容】
まえがき
序説──人間の知恵の三つのタイプ:宗教・哲学・科学
─古代概観─
第一章 宗教・哲学・科学的思想の発生
第二章 哲学と人間の問題─ソクラテスの提起したもの─
第三章 古典ギリシア哲学─プラトンとアリストテレスの哲学─
第四章 ヘレニズム世界─拡大された世界、西方と東方の結婚─
第五章 ローマ世界の精神
著者のいう「知恵」とは、人間の生き方を問う「知恵」のことであり、それにはとくにすぐれたものとして、「宗教・哲学・科学」という三つのタイプがあると言うのです。
つまり、「知恵」が必要とされるのは、歴史的な危機に直面し、その危機の中で人生観・世界観・人間観が揺さぶられたときなのです。とくに、注目すべきことは、知恵は人間を救うというだけでなく、ふるい立たせ、豊かにすると言われていることです。 確かに、私たちの時代においても、凶悪犯罪、東日本大震災、福島原発事故、世界的流行病(パンデミック)など、歴史的に記憶されるべき事件が起きています。それによって人生観・世界観・人間観が揺さぶられた人、再考した人もいるでしょう。また、ネットを含むメディアによる情報の洪水によって画一的な思考に自分が染められてしまっていることに気づいて愕然とした人もいるでしょう。あらゆるものが相対化され、多様な価値観の衝突が随所で起こり、流動する現実に身を委ねるしかなく、常に不安定な状態、激しい競争の中に置かれているのが現代人です。 こうした状況にあって時代や現実の流れに抵抗する人を導くのが「人間の知恵」であり、だから「知恵」には哲学の知恵だけでなく、宗教の知恵も、科学の知恵も含まれねばなりません。 最初は哲学史の教科書として企画された本書が、結果的に宗教・哲学・科学の三つのタイプを含む知恵の歴史として書かれねばならなかったのは、著者が時代と向き合った結果であったとは言えないでしょうか。(「まえがき」より)