『いたみといたわりをめぐる人間中心の心理学 ― 十分に機能するためのねじれといやしの方程について ―』
村田 進[著]
定価(本体2,000円+税)
ISBN978-4-434-26860-1 C0011
前作の先行研究たる体験過程3部作に引き続き、当事者の視点から見た体験過程理論を自身に照らしながら実証的に検証する新たな試み
本書の研究の手法は、ジェンドリンを介した彼の師なるディルタイが『創作と体験』の中でシェークスピアやゲーテの文学作品から「体験―表現―理解」の道筋を見出したように、ウルフ文学を根拠にしていやしの「手がかり」を「手ごたえ」に変えるべく体験過程の一定の「方程」を見出そうとする解釈学的な試みであった。その基となる私自身のいやし体験から見出したものはいたみといたわりの「交差」(ジェンドリン、池見)というフォーカシングの「ハンドル表現」(同)であった。 かくて、「自身の事例性」を舵として大海をこぎ出した私であったが、それはあたかも舟を操る「老人と海」の心境であった。しかしながら、先人の跡を辿ってここに来てようやく得た成果は、人生の受苦たる「いたみ」とそれに寄り添う「いたわり」の手が指し示す虚無感ならぬ人間愛そのものの実感であった。
【本書の内容】
序論 私として人間として
第1部 ねじれ仮説の成り立ち
―ロジャーズ「不一致の図」とジェンドリン「プロセスモデル」から―
序章 私という事例から
第2章 他の当事者事例について
第3章 いたみといたわりの交差といやしの構造について
第4章 畠瀬モデルとねじれ仮説
第2部 ねじれと臨床
第5章 YG 性格プロフィールとの整合性について
第6章 アセスメントの実例
終章 十分に機能する人間の在り方について
結論 仮説の検証