第28回
久しぶりに冬らしい寒い日が続いていますが、読者の皆様はいかがお過ごしでしょうか?
前回緊急出版のお知らせをした『“則天去私”という生き方--心理学からスピリチュアリズムヘ』が予定どおり1月11日に刊行され、本日全国配本されました。現在明治大学文学部心理社会学科教授をしておられる著者の三沢直子さんによると、なぜこの日にしたかというと、実は1月11日は伊勢神宮に祀られている神々が年に1度集まって酒宴を催すとてもめでたい日だからとのことでした。そもそもこの本の全文をインターネットで公開したのが昨年の11月11日で、本文をお読みいただければわかるようにこれにも深い理由があるのです。そしてたまたま筆者(大野)の誕生日がこの日だったのです。この時すでに小社からの刊行がほぼ「運命づけられて」いたと言っていいと思います。また、この11月11日は「世界平和記念日」でもあるのです。これにも何か深い意味がありそうです。
そして実際に三沢先生にお会いして出版の打ち合わせをしたのが昨年の11月20日頃でしたので、年末年始を考慮するとかなり緊急な作業が必要でした。にもかかわらず今回正確に1月11日に間に合わすことができたのは、なかなか意味深いことだと思います。
こんな具合に三沢先生のまわりでは今もシンクロ現象が起こり続けているとのことでした。そういうわけで、本書の刊行には様々なシンクロ現象がからんでいます。「あとがき」で、このシンクロニシティに関して次のように述べられています。一見さりげない指摘ですが、なかなか含蓄に富んでいると思います。
浅見帆帆子著の『やっぱりこれで運が良くなった!』という本を持っていて、その中で極めて分かりやすくシンクロニシティが説明されていた。浅見帆帆子さんはロンドンに留学経験のある、今若者たちに絶大な人気のある著述家だそうだ。その中から、以下にシンクロニシティが起こりやすい状況についてまとめた部分をご紹介したい。
・ 毎日楽しい気持ちで過ごしているとき。
・ 家族や友人や周りの人たちに対して穏やかな気持ちでいるとき。
・ 余計な不安や心配をせずに、そのとき目の前にあることを一生懸命しているとき。
・ 部屋(家)や身の回りが整理整頓されて、さっぱりときれいなとき。
・ 自分が心から楽しいと思えることに没頭しているとき。
・ 自分の今の状況に感謝していて、すべてのことに「ありがたいなあ」という気持ちで肯定しているとき。
ところで、このシンクロ現象はさらに『日本人の心のふるさと《かんながら》と近代の霊魂学スピリチュアリズム』の出版引き受けへとつながりました。著者は近藤千雄(こんどう・かずお)先生(昭和10年生)です。先生のプロフィールをご紹介しておきます。
高校時代にスピリチュアリズム思想を知り心霊研究会にも出席して、死後の世界の実在を確信。
明治学院大学英文科に在学中から原典を読み、その翻訳を決意して4年次で翻訳論を専攻。これまでに数次渡英・渡米して著名霊媒・心霊治療家と親交を深めている。『人生は霊的巡礼の旅』(ハート出版)、『シルバーバーチの霊訓』全部12巻(潮文社)、『レッドマンのこころ』(北沢図書出版)など著訳書多数。
三沢先生がスピリチュアリズムに出会ったのも近藤先生の先駆的な翻訳著作に負うところが大だったのです。その先生に久しぶりに今回の本のことにからんで連絡したところ、たまたま集大成的な本を準備し、できれば刊行したいと思っておられたというのです。しかもその内容はスピリチュアリズムについての総合的解説だけでなく、スピリチュアリズムの観点から古神道の精髄にも迫ったものだというのです。これは三沢先生の『“則天去私”という生き方』の「第七章 スピリチュアリズムの日本的なあり方」(伊勢神宮での体験などに触れたもの)に密接に関連しています。近藤先生は「まえがき」で次のように述べています。
十九世紀半ばに米国で勃興し、二十世紀初頭に英国で飛躍的な発展を遂げ、二十世紀半ばに日本に移入されて、今、新ミレニアムの人生指針として静かな注目を集めている人生思想に《スピリチュアリズム》というのがある。
人間の個性の死後存続を大前提とした生命哲学で、私は十八歳の時にこの思想に出会って以来、古稀を目前にした今日までのほぼ半世紀にわたって関わり続けてきた。
その間に翻訳した英米の関係書はほぼ五十冊、自著ならびに編著は十冊を超えるが、それほど西洋の著作に関わってきた私が次第に目覚めてきたのが、日本人の心の原点ともいうべき《かんながら》、すなわち漢字が輸入されて以来《神道》と呼ばれるようになった霊的思想と、その物的表象としての《神社》のすばらしさである。「他」を知ることによって「自」に目覚めたということであろうか。
スピリチュアリズムを軸にして三沢先生と近藤先生の関心が共に、この10年ほどの間にはからずも神道/伊勢神宮へと向かっていたというのはまさにシンクロ現象と言っていいと思います。しかもスピリチュアリズムには特に実績のない、無名の小出版社に突然話がまわってきたというのも、考えてみれば不思議な因縁と思われます。そんなわけで、近藤先生の本を現在刊行準備中です。
今後の予定としては、前回も触れた"Meeting Life: Writings and Talks on Finding Your Path without Retreating from Society"(邦題「生と出会う』の予定)の翻訳が進行中(大野龍一さん)で、2-3月ごろの刊行をめざしています。伝記『目覚めの時代』『実践の時代』の著者メアリー・ルティエンスが編集した本です。これはクリシュナムルティ晩年の主著の一つであると言っていいと思います。目次だけ紹介しておきます。
第1部 小品集
湖■あらゆる昨日に向かって死ぬこと■庭園■生の問題■樫の木■自由は秩序である■英知と即座の行動■川■関係とは何か?■凡庸な精神■ただ独りあること■水差しは決していっぱいにならない■謙虚さの本質■瞑想と愛■瞑想と経験■若者へ■愛は思考ではない■関係とは何を意味するか?■美は危険である
第2部 質疑応答
瞑想と時間のない瞬間■恐怖と混乱■知らないという状態■愛、セックス、そして宗教的な生活■テレビインタビュー■聴く能力■友情の探求■美とは何か?■執着からの自由■もしも人が自由なら■攻撃性■意志と欲望■知識が不要な場合■人に助けを求めるな■クリシュナムルティ学校の目的■社会に抗して立つ■どう生と向き合うか■社会の要請
第3部 講話
宗教的な精神とは何か?■若さの問題■分離を知らない精神■愛は教えられない■悲しみの理解■重荷を課せられていない精神■慈悲の光■瞑想について■自由■思考と時間を超えて■時間、行為、そして恐怖■人生に意味はあるのか?■静かな精神■悲しみの終わりが愛である■美、悲しみ、そして愛
今後ともよろしくお願いたします。
2006年1月18日